バスケの聖地“代々木第二”で女子3×3の新たな歴史。「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ 東京ストップ 2026」を振り返る
2026年8月5日
8月1日から2日間にわたり「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ 東京ストップ 2026」が開催されました。舞台は、国立代々木競技場第二体育館。日本のバスケットボール史で名勝負が繰り広げられてきた言わば「聖地」で、日本勢が世界の強豪と激突。惜しくも優勝に届きませんでしたが、女子3×3世界最高峰の大会で選手たちの奮闘が光りました。2028年のロサンゼルスオリンピック出場を目指す上でも、弾みのついた大会を振り返ります。
三菱電機がチーム初の2位。「応援してもらえるチームになってきた」
国立代々木競技場第二体育館に設置された3×3の大会特設コート。5人制でお馴染みの会場なだけに、ハーフコートの光景は新鮮でした。7年ぶりに「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ」が、東京に帰ってきたのです。
2019年大会以来、2度目の女子3×3世界最高峰の舞台には、オランダやカナダなど強豪国が集結する中、日本から3チームが参戦。3×3女子日本代表、コマーシャルチームの三菱電機、3×3日本選手権を制して出場権を獲得した高崎になります。さらに、3×3女子日本代表の桂葵選手が、アゼルバイジャンのNeftchi SOCARの一員として出場しました。
熱戦続きの2日間を振り返ると、数々のハイライトが目に浮かびます。最も象徴的だったシーンが、三菱電機の決勝進出でした。FIBAから参戦権を購入してウィメンズシリーズに出場するコマーシャルチームとして、初年度ながらWリーグの三菱電機コアラーズに所属する髙橋芙由子選手(163cm)、山本雪鈴選手(165cm)、澤知央選手(178cm)、山本遥香選手(177cm)の4人が、代々木で3×3の選手として躍動しました。
8月1日のDAY1では、ルーマニアを14-5で下し、カナダには14-21で敗れるも、1勝1敗で予選プールを2位で突破。会場にはコアラーズのタオルを持ったたくさんのファンが訪れ、チームをあと押し。髙橋選手は「いつもだったら愛知でやるから、コアラーズのタオルを見る機会があるけど、東京でこうやって見えるのがすごく嬉しいです。チーム全員で応援してもらえるチームになってきたということだと思うので、すごく嬉しかったです!」と、笑顔で明かした様子も思い出されます。
一夜明けた2日のDAY2決勝トーナメントでは、その勢いが加速します。長身選手ぞろいのフランスU25に一時10点差をつけるなど圧倒して18-11で準々決勝を突破。過去2度のストップで壁になっていた準決勝も、190cm近い選手が2人、シュート力も備える難敵・北京を21-19で下してチーム史上初の決勝へ。山本(雪)選手は「高さのミスマッチがありましたが、逆に自分たちはスピードのミスマッチがあったので、そこで勝とうという考えでした。最後の部分では(タイムアウトを取って)自分たちが落ち着いてやろうという気持ちでした」と、勝因を語りました。
ただ、決勝では2025年のFIBA 3×3 ワールドカップ覇者・オランダに16-21で敗戦。再三食らいつくも、大会MVPに選ばれたIlse Kuijt選手のシュート力に押し切られました。非常に悔しさの残る戦いになりましたが、3×3とWリーグの両方で戦う選手たちの奮闘劇に、心動かされた方も多いのではないでしょうか。先駆者である髙橋選手は、涙の中でもチームの姿に胸を張りました。
「私はもちろん(3×3もWリーグも)どちらも経験はありましたけど、3×3の経験が無かった子たちが、ここまでシーズンを通して成長できる姿を見せられているのは、三菱電機というチームとしてすごく良い仕事をしているからだと思います。日本の3×3界にもすごく良い存在になれているんじゃないかと思っています」

3×3女子日本代表は3位。「この負けには意味がある」
そんなコアラーズとの対戦を望んで「本当に欲を言えば、決勝で三菱とやりたかった」と話したのは、3×3女子日本代表の宮下希保選手(178cm)でした。2019年の3×3初代表から8年。彼女もWリーグと3×3の代表活動に取り組んできた一人です。会場の客席を見ると、多数のWリーグでプレーする選手たちの姿もあり、宮下選手は「世界と戦えるところ。5人制は、ビッグマンを守るためにヘルプがありますが、3人制は基本的に1人で守らないといけない。体を張ってプレーできるところは見せられたんじゃないかなと思います」と振り返ります。
そして、東京ストップで決勝進出は叶いませんでしたが、3×3女子日本代表もひとつ壁を破った試合は、日本の3×3史に残るような名勝負になりました。宮下選手は、田中平和選手(181cm)、高橋未来選手(169cm)、野口さくら選手(182cm)とともに予選プールでシンガポールに21-6で快勝し、フランスU25には18-21で敗れるも、プール2位で決勝トーナメントに。準々決勝の相手は、昨シーズンのウィメンズシリーズファイルを制したカナダでした。行き詰る大接戦となる中、終了間際に宮下選手と高橋選手の2メンゲームで決勝点を奪うプレーが飛び出し、19-18の劇的勝利。選手たちに歓喜の輪が生まれ、代々木第二が大歓声に包まれたのです。
それでも準決勝の壁は、また一段と高いものでした。オランダに11-15で敗れ、大会を3位で終戦。宮下選手は、悔しさを受け止めて、次の戦いに向けて立ち上がる決意をにじませました。
「オランダの4人は、私たち以上に何十倍も積み上げているチームだと思うし、経験もあるチームです。そこに勝ちたかったですけど、この負けは意味がある負けだと思います。そんなに簡単には勝てない。ウィメンズシリーズのウランバートルストップのドイツ戦の敗戦もそうですが、今回カナダに勝てたけど、まだまだ上には上がいるということを思い知らされました。もう一回、自分たちは地に足をつけて練習していきたいと思います」

強豪ネフチでプレーする桂選手へ多くの声援。「覚悟」が伝わった2日間
一方で、アゼルバイジャンの強豪Neftchi SOCARに今シーズン移籍して、日本で初めてプレーした桂葵選手(182cm)からは、充実した様子がうかがえました。会場には彼女を応援しようと数多くのファンが足を運び、自身が立ち上げたZOOSのユニフォームを着た子どもたちも。みんな待ち望んでいたのです。DAY1初戦でのアメリカ戦を18-13で勝ち切ったあとには、「ちょっとドキドキしちゃいました(笑)」と思わず本音が聞こえてきました。
それでも、続くオランダ U25にも20-18で勝利を収めてプール首位で決勝トーナメントへ。桂選手は「この4人のメンバーで積んできたわけでは無かったので、どこまでの3×3をお見せできるか、すごく不安なところもありました。ですが、レクシー(=Alexandra Mollenhauer選手)中心にネフチらしいバスケットをなんとか手探りで表現できたんじゃないかなと思います。1位通過できて、嬉しいです」と振り返っていました。
決勝トーナメントの初戦で北京に17-20で敗れて、大会を去ることになりましたが、ツアーランキング2位のNeftchiにとって、ゴールは9月5日、6日に上海で開催されるウィメンズシリーズの年間優勝決定戦・ファイナルになります。桂選手は「ファイナルに向けて、もう一度勝負強さと、ディフェンスの課題感を修正していきたい」と、前向きでした。
戦前、今大会に向けて「私の“覚悟”を見てほしい」と話していた桂選手。ネフチは主力にケガ人を抱えてベストな布陣が組めなかった中でも、女子3×3世界No.1プレーヤーであるMollenhauer選手とのピック&ロールで見せ場を作り、2ポイントシュートも射抜き、経験の浅い選手に声を掛けるなど、海外チームで自分の役割を探し貢献しようとする姿が終始見られました。まだまだ続く挑戦の先に、桂選手にどんな選手へ成長するのか。その経験値、思考、スキルなどは、日本の3×3を大きく後押しする力にもなるでしょう。

大型補強した高崎が奮闘。「全員が同じ方向を向いてできている」
また、決勝トーナメント進出は叶いませんでしたが、DAY1の予備予選から本戦予選まで1日4試合を戦い抜いた高崎の奮闘も、東京ストップのハイライトです。
新外国籍選手2名(Cierra Burdick選手、Azana Baines選手)が合流間もない中、予備予選の初戦でインドネシアに21-5の圧勝し、ライオンシティにも21-10で快勝して、本戦予選へ。朝からチームに送られた声援に背中を押されたようで井齋沙耶選手(176cm)は「すごく力になりました。8月末にある高崎ストップに向けて、今日明日と良い流れを持ってこられるように頑張ります」とコメント。新外国籍選手の一人、3×3女子アメリカ代表としてパリオリンピック2024に出場した実績も持つBurdick選手(187cm)についても、その印象を教えてくれました。
「数回しか練習していませんが、すごく大きな選手ですけど、ハンドラーもできます。私は良いスクリーンをかけて、良いパスを出していきたいと思ってやっています。あと、コミュニケーションもしっかり取ってくれるので、やりやすいですね」
高崎は、DAY1の午後に行われた本戦予選で北京に12-16、オランダに10-21と2連敗して、大会を終えることになりましたが、その様子はポジティブでした。横井美沙選手(170cm)は「チームとして目指すべきところへ、全員が同じ方向を向いてできていると思います。また次、高崎ストップ(8/29-30)があるので、そこに向けて(全員で)合わせながらやっていきたい」と、地元初開催の大一番へ、レベルアップを誓いました。

次なるウィメンズシリーズは高崎へ。LA2028出場を目指す挑戦は続く
数々のハイライトを残して幕を閉じた「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ 東京ストップ 2026」。代々木第二体育館で、日本から挑んだ女子選手たちが世界を相手に躍動した姿は、必ずや3×3の未来に繋がっていくものになるでしょう。桂選手が、2019年の東京ストップを見てウィメンズシリーズのコートに立ちたいと決意したように、きっと会場で、配信を通して、熱戦を目にした次世代が現れるに違いありません。
そして競技シーンの発展を目指す上でも、ロサンゼルスオリンピック2028の出場権獲得は大きな目標です。3×3の公式戦では出場大会に応じてポイントを獲得できるルールがある中、ウィメンズシリーズはそのグレードが女子で最も高く、この舞台でポイントを多く獲得できれば、それだけ2年後のオリンピックに近づいていきます。
2028年のロサンゼルス大会へ、予選会をパスして出場するストレートインを狙う日本はアジア・パシフィック地域で上位2カ国入りする条件がある中、日本女子は目下、その圏内の2位。モンゴルが3位で追走していますが、東京ストップの結果が反映された最近のランキング(8/3更新)に基づくと、その差が広がりました。大会終了前(8/1)はわずか83,367pt差でしたが、今大会の結果が反映された最近のランキング(8/3)ではポイント差が238,001ptに広がり、日本の国別ランキングも8位から6位へ浮上しました。
ただ、ストレートインでオリンピックの出場権を獲得できるかどうかは、2027年12月1日のFIBA 3×3ランキングに基づくため、その道のりは半ばです。それでも、東京ストップで見せた日本勢の奮闘はこれからの競技シーンにポジティブな影響をもたらしていく。いつの時代も、競技の価値を高め、魅力を伝えてくれるのは選手たちです。高崎ストップの戦いにも、ご注目ください。
【東京ストップ最終結果】
・優勝:オランダ|MVP:オランダ #17 Ilse Kuijt選手
・2位:三菱電機
・3位:3×3女子日本代表
・6位:Neftchi SOCAR
・9位:高崎
【国内のウィメンズシリーズ予定】
・8月29日(土)、30日(日)に 高崎アリーナ(群馬県)で「FIBA 3×3ウィメンズシリーズ 高崎ストップ 2026」が開催されます。
・ホストチームとして高崎が出場。3×3女子日本代表と、6月の国内予選大会「Q.O.Q. 3×3 2026」を優勝した3×3女子U23日本代表が、3×3女子U24日本代表として出場します。
【開催報告】東京ストップ開催に先立ち、FIBAがセミナーを開催
7月31日(金)に、国際バスケットボール連盟(FIBA)が、都内で「Women 3×3 Basketball Seminar 2026 Tokyo ~3 人制が 5 人制のクラブと選手にとって有益な理由とは 両競技の調和~」と題して、セミナーを開催しました。
FIBA 3×3 マネージングダイレクターのアレックス・サンチェス氏が登壇し、ゲストスピーカーには、諸橋寛子氏(ゼビオホールディングス株式会社アドバイザリーボード・チェアマン)、ソニア・グライナッヘル氏(元3×3女子ドイツ代表/パリオリンピック2024 3×3金メダリスト)、東野智弥氏(三菱電機コアラーズ ゼネラルマネージャー)の3名が招かれました。3×3という競技がもたらす価値や魅力、可能性が、各登壇者より語られ、多くの関係者が耳を傾けました。